その一つは、川村義雄との交りを深くして、彼の心からの信頼を得ること、第二は川村の瑠璃子に対する情熱を陰に陽に煽り立て、わしが嘗つて瑠璃子に抱いていた以上の狂恋に溺れさせること、第三には、このわしがひそかに瑠璃子の心を捉え、瑠璃子を我物として置いて、最も適当な機会に、その事を川村に知らしめ、彼奴を絶望のドン底につき落してやること。
無論これは、わしの復讐事業の最後の目的でなく、ちょっとした前芸に過ぎないのだが、その前芸丈けでも、わしの蒙ったと同じ、或はそれ以上の心の痛手を、川村に負わせてやることが出来るというものだ。
さて、Y温泉の別荘で、あの恐ろしい発見をしてから、一週間ばかりは別段のこともなく過去った。