又、曲れる鉄の道具を鼻口より挿入して、脳髄を残りなく取出し、かくして空虚となれる頭蓋と胴体を棕梠酒にて洗浄、頭蓋には鼻孔より没薬等の薬剤を注入し、腹腔には乾葡萄其他の物を填充し、傷口を縫合す。
かくして、身体を七十日間曹達水に浸したる後、之を取出し、護謨にて接合せる麻布を以て綿密に包巻するなり」
彼は幾度も同じ部分を読返していたが、やがて、ポイとその本を放り出したかと思うと、頭のうしろをコツコツと叩きながら、空目をして、何事か胴忘れした人の様に、「なんだっけなあ、なんだっけなあ、なんだっけなあ」と呟いた。