というのは、まんざら根のない話でもないので、いったい彼のうちには、おじいさんか、曾じいさんかが、切支丹の邪宗に帰依していたことがあって、古めかしい横文字の書物や、マリヤさまの像や、基督さまのはりつけの絵などが、葛籠の底に一杯しまってあるのですが、そんなものと一緒に、伊賀越道中双六に出てくるような、一世紀も前の望遠鏡だとか、妙なかっこうの磁石だとか、当時ギヤマンとかビイドロとかいったのでしょうが、美しいガラスの器物だとかが、同じ葛籠にしまいこんであって、彼はまだ小さい時分から、よくそれを出してもらっては遊んでいたものです。
考えてみますと、彼はそんな時分から、物の姿の映る物、たとえばガラスとか、レンズとか、鏡とかいうものに、不思議な嗜好を持っていたようです。
それが証拠には、彼のおもちゃといえば、幻灯器械だとか、遠目がねだとか、虫目がねだとか、そのほかそれに類した、将門目がね、万華鏡、眼に当てると人物や道具などが、細長くなったり、平たくなったりする、プリズムのおもちゃだとか、そんなものばかりでした。