かようにして、彼のレンズや鏡に対する異常なる嗜好は、だんだんと嵩じて行くばかりでしたが、やがて中学を卒業しますと、彼は上の学校にはいろうともしないで、ひとつは親たちも甘過ぎたのですね、息子の言うことならば、たいていは無理を通してくれるものですから、学校を出ると、もうひとかどおとなになった気で、庭の空き地にちょっとした実験室を新築して、その中で、例の不思議な道楽をはじめたものです。
これまでは、学校というものがあって、いくらか時間を束縛されていたので、それほどでもなかったのが、さて、そうして朝から晩まで実験室にとじこもることになりますと、彼の病勢は俄かに恐るべき加速度をもって昂進しはじめました。
元来友だちの少なかった彼ですが、卒業以来というものは、彼の世界は、狭い実験室の中に限られてしまって、どこへ遊びに出るというでもなくしたがって来訪者もだんだん減って行き、僅かに彼の部屋をおとずれるのは、彼の家の人を除くと、私ただ一人になってしまったのでした。