それは言うまでもなく、巨大な平面鏡を室一杯に斜めに張りつめて、その一部に穴をあけ、そこから首や手足を出している、あの手品師の常套手段にすぎないのですけれど、それを行なう本人が手品師ではなくて、病的なきまじめな私の友だちなのですから、異常の感にうたれないではいられません。
ある時は部屋全体が、凹面鏡、凸面鏡、波型鏡、筒型鏡の洪水です。
その中央で踊り狂う彼の姿は、或いは巨大に、或いは微小に、或いは細長く、或いは平べったく、或いは曲がりくねり、或いは胴ばかりが、或いは首の下に首がつながり、或いはひとつの顔に眼が四つでき、或いは唇が上下に無限に延び、或いは縮み、その影がまた互に反復し、交錯して、紛然雑然、まるで狂人の幻想です。