手紙にはむろん、差出人の名はしるされていなかったし、消印も或いは大阪市内、或いは京都、或いは東京と、その都度ちがっていた。
そういう際ではあったけれど、婚家との約束を破るのもはばかられたし、いやな手紙の舞いこむ自宅を、しばらく離れてみるのも好ましく思われたので、岩瀬氏は意を決して旅に出ることにした。
そのかわりには、用意周到にも、万々一のことがあってはと、かつて店の盗難事件を依頼してその手並みのほどを知っている、私立探偵の明智小五郎に、令嬢の保護をたのむことにした。
手紙にはむろん、差出人の名はしるされていなかったし、消印も或いは大阪市内、或いは京都、或いは東京と、その都度ちがっていた。
そういう際ではあったけれど、婚家との約束を破るのもはばかられたし、いやな手紙の舞いこむ自宅を、しばらく離れてみるのも好ましく思われたので、岩瀬氏は意を決して旅に出ることにした。
そのかわりには、用意周到にも、万々一のことがあってはと、かつて店の盗難事件を依頼してその手並みのほどを知っている、私立探偵の明智小五郎に、令嬢の保護をたのむことにした。