女賊はいきなりそのドアの中へ姿を消しながら、何か一こと合図のような声をかけると、車はたちまち走り出した。
その車の運転手は「黒トカゲ」の部下であって、あらかじめ打ち合わせておいて首領を待ち受けていたのにちがいなかった。
売店の亭主は、女賊の車が動き出すのを見ると、何をとまどいしたのであろう、塔の方へは帰らないで、やにわに大通りに飛び出して、キョロキョロとあたりを見廻していたが、ちょうどそこへ通りかかった一台の空自動車に、彼はサッと手をあげて、その車を呼びとめ、飛び乗るが早いか、さいぜんとは打って変った歯切れのよい口調で叫んだ。