虫太郎の作品が如何に神秘的素材に充ちていたかは読者の知るところであるから、ここにはカーの場合を二三例示してみる。
一九三四年作「劔の八」にはタロク・カードの劔の絵の第八のカードが殺された人物の身辺に落ちていて、それが全体の筋に異様な神秘性を与えている。
カーはこの作でタロク・カードについてくわしい説明はしていないが、他の神秘学書によって簡単に解説すると、それにはエジプト・タロク、印度タロク、イタリー・タロク、マルセイユ・タロク、ジプシイ・タロクなどいろいろの種類があるが、カーが用いたのは最も普通に流布しているエジプト起源のエッテイラ・タロク内の小タロク・カードの一枚で、劔の第八には八本の劔が矢車型に描かれ、その中央に横線があって水面を現わしてある。