すると、世界最初の指紋探偵小説はマーク・トウェーンの作品ということになるが、ところが、「ミシシッピ河の生活」よりはおそいが、「抜けウイルソン」よりも早く、日本で指紋探偵小説が出版されているのである。
厳密な意味の指紋ではなく、手の平全体の隆線模様による鑑定であるが、占師の見る手の筋だけではなく、五指の指紋をはじめ手の平全体の隆線模様による犯人鑑別が、中心テーマとなっている。
その作品は帰化英人の講談師兼落語家快楽亭ブラックの口演速記「幻燈」で、これはマーク・トウェーンの第二の作品が出た一八九四年(明治二十七年)の前々年、明治二十五年に単行本として出版されている。