厳密な意味の指紋ではなく、手の平全体の隆線模様による鑑定であるが、占師の見る手の筋だけではなく、五指の指紋をはじめ手の平全体の隆線模様による犯人鑑別が、中心テーマとなっている。
その作品は帰化英人の講談師兼落語家快楽亭ブラックの口演速記「幻燈」で、これはマーク・トウェーンの第二の作品が出た一八九四年(明治二十七年)の前々年、明治二十五年に単行本として出版されている。
日本に指紋法が実施されたのは明治四十二年であるが、それより十七年も前に指紋と掌紋による個人鑑別の探偵小説が出版されているのは、充分珍とするに足ると思う。