日本に指紋法が実施されたのは明治四十二年であるが、それより十七年も前に指紋と掌紋による個人鑑別の探偵小説が出版されているのは、充分珍とするに足ると思う。
その「幻燈」の内容を説明する前に、犯罪の個人鑑別に指紋法が実施されるまでの歴史をしらべてみる。
これにはいろいろな参考書があると思うが、私は、「犯罪科学全集」(武侠社、昭和五年)の第十二巻に古畑博士が執筆された「指紋学」と、「エンサイクロペディ・アメリカナ」の指紋項によって、(ブリタニカの最新版の指紋の項は詳しくない)簡単な年代記を作ってみた。