その一つは「ノーウッドの建築師」で、これには偽指紋を壁に捺して、無実の者に嫌疑をかけることが描かれているが、その方法は、ある人物の拇指紋が封蝋の上に残っていたのを利用して、その封蝋に別の蝋をおしつけて型をとり、それに血を塗って壁に捺すという、ごく単純なものである。
また、この作品には今日では一般化しているフィンガープリントではなくて、thumb-mark という字が使われている。
もう一つの作品は「アベ・グランジの惨劇」で犯罪現場に三つのコップが残っていて、犯罪の当時三人の人間がそこで酒を呑んだように見せかけてあるが、実は二人しかいなかったのだということを、ホームズが推理する。