ところが、この推理にはコップという絶好の道具が出ているにもかかわらず、指紋は全く無視され、ホームズは指紋鑑識について何も知らないように描かれている。
私は右の二つの作が雑誌に発表された年を知らないが、いずれにしても、一九〇五年に出版された本には、まだ指紋の知識が十分利用されていなかったことになる。
それから二年後に出たフリーマンの「赤い拇指紋」には、さすがに科学的に指紋の偽造が描かれているが、このころになって、スコットランドヤードの指紋課というものがようやく充実し、その効用が一般に認められてきたためではないかと思われる。