この「幻燈」がブラックの創作か、あるいはイギリスの当時の小説から筋をとったものか、いまとなっては全く手掛りがないけれども、後にしるすようにブラックの講談には涙香も翻訳したイギリス流行作家 Mary Elizabeth Braddon 女史の作品などもあるので、これもおそらくイギリス小説によったものではないかと思う。
その原作が何であるか、探偵小説史にも残っていない無名作家の作品をさがし出すことは、日本においてはとうていできない話である。
「幻燈」の作者については、正岡容君が「宝石」昭和二十二年一月号に「英人落語家ブラックの探偵小説」と題する随筆をよせて『明治年代、西洋人情噺を以而、よく大円朝、初代燕枝に拮抗したる存在に、英国人の落語家快楽亭ブラックがあった。