「棠陰比事」の七十二対の事件は、いま読んでは大して面白くないものが大部分であるが、中にはオヤッと思うような面白いものがないではない。
単なる機智の話では、例の実母裁判などいろいろあるが、原始法医学としては、私は「張挙豬灰」と「傳令鞭絲」の二つを最も興味深く感じている。
前者は、夫を殺し家に火をつけて、夫は誤って焼死したのだといつわる妻を裁く物語で、裁判官は二匹の豚を法廷に引き出させ、一匹を殺し、一匹は生きたまま、火に投じて焼き、後に豚の死骸の口中を検べさせると、殺してから焼いた豚の口中には灰がなく、生きたまま焼いた豚は、火中で呼吸したために、口中に灰がある。