だがスリラアという低調な名称にはあたらぬけれども、トムスンのあげた諸作がなんらかのスリルを重大な要素としていることは否み難い。
いや、それどころか古来の大文学にはほとんど例外なくスリルの魅力が含まれているといってもいいすぎではない。
(ただスリルにもいろいろの段階があって、スリラアというスラングは「こわがらせ」「お涙頂戴」などの俗語が意味すると同じ、低調卑俗なスリルを取り扱ったものだけを指しているとみるのが穏当かと感じられる)ことに探偵小説ではスリルのない作品なんて絶無といってもさしつかえないと思う。