これは探偵小説とはほとんど縁がなく、恋愛小説や家庭小説やいわゆる悲哀小説の取り扱うところであるが、破鏡の悲愁(「不如帰」など)貧苦病苦の悲愁(「筆屋幸兵衛」など)子供をかせのいわゆるお涙頂戴のスリル(「なさぬ仲」など)等、なかなかその種類は少なくない。
それから怒りの感情もその極端にはスリルがあってよいと思う。
読物ではその適例を見出すのがむつかしいけれど、芝居では、二枚目を責めさいなむ敵役、嫁いびりの悪婆などの芸が頂点に達すると、娘さんをくやし泣きに泣かしめ、手荒い見物をして半畳を舞台目がけて投げつけさせるほどのスリルをあたえることができる。