読者諸君は低調な読物ほど「ゾクゾク」「ブルブル」「ハラハラ」「ヒヤヒヤ」「ドキドキ」「ドキン」「ゾーッと」「ギョッと」「アッと」「ハッと」「キャッ」「ゲッ」などの言葉に満ちているのを思い出すことができるであろう。
これらの言葉こそスリルそのものを生のままいい現わしているのであって、低調な作物にそれが頻出するのはむしろ当然のことである。
(上述のさまざまのスリルのうち探偵小説に縁の深いものは恐怖スリルであって、そのほかのものはほとんどここに言及する必要はなかったのであるが、恐怖以外の快苦にもスリルの存在することについて読者の注意をひいたまでである。