また一人二役の裏は双生児トリックであるが、その恐怖を代表する作品はポーの「ウィリアム・ウィルスン」エーホルスの「プーラーグの大学」などであって、これをかりにウィリアム・ウィルスン型のスリルと名づけてもよいと思う。
自分自身と寸分顔形の違わぬやつが、この世のどこかにいて(ひょっとしたら、そいつはすぐ身近にウロウロしているかも知れない)どんな恐ろしい悪事をたくらんでいるかわからないという気持は、ほとんどたえ難い恐怖であろう。
どこかの雑沓の群集の中で、あるいはまた人影もない闇夜の四つ辻でヒョイとそいつに出会うかも知れないという想像には、実に恐ろしいスリルを含んでいる。