ヴァン・ダインは探偵小説はパズルの興味以外のあらゆる文学的要素と絶縁すべきであるかのごとき口吻を漏らしているが、彼の論調にしたがえば、スリルもまたその絶縁すべき要素の一つであろうと思う。
そういう考え方は、純粋は純粋であって、議論として気持はいいし、その法則にしたがった探偵小説が(もしありとすれば)存在することも、むろん一つの型として望ましいのであるが、それですべての探偵小説を律しようとするのは、結局「探偵小説の貧困」を招くことでしかない。
スリル絶縁論はヴァン・ダインにさかのぼらずとも、我々の日常しばしば目にするところである。