中にも彼女が笑う時の、恥らい勝ちな、弱々しい美しさには、私は何か古めかしい油絵の聖女の像でも見ている様な、又はあのモナリザの不思議な微笑を思い起す様な、一種異様の感じにうたれないではいられなかった。
彼女の糸切歯は真白で大きくて、笑う時には、唇の端がその糸切歯にかかって、謎の様な曲線を作るのだが、右の頬の青白い皮膚の上の大きな黒子が、その曲線に照応して、何とも云えぬ優しく懐しい表情になるのだった。
だが、若し私が彼女の項にあの妙なものを発見しなかったならば、彼女はただ上品で優しくて弱々しくて、触れば消えてしまいそうな美しい人という以上に、あんなにも強く私の心を惹かなかったであろう。