青白い滑かな皮膚の上に、恰好のいいなよなよとした項の上に、赤黒い毛糸を這わせた様に見えるその蚯蚓脹れが、その残酷味が、不思議にもエロティクな感じを与えた。
それを見ると、今迄夢の様に思われた彼女の美しさが、俄かに生々しい現実味を伴って、私に迫って来るのであった。
話している間に、彼女は合資会社碌々商会の出資社員の一人である実業家小山田六郎氏の夫人、小山田静子であったことが分って来たが、幸なことには、彼女は探偵小説の読者であって、殊に私の作品は好きで愛読しているということで(それを聞いた時私はゾクゾクする程嬉しかったことを忘れない)つまり作者と愛読者の関係が私達を少しの不自然もなく親しませ、私はこの美しい人と、それきり別れてしまう本意なさを味わなくて済んだ。