無論私は大江春泥の作品はよく知っていたが、春泥という男が非常な人嫌いで、作家の会合などにも一度も顔を出さなかったので、個人的なつき合いはなかった。
それに、彼は昨年のなか頃からぱったり筆をとらなくなって、どこへ引越してしまったか、住所さえ分らないと云う噂を聞いていた。
私は静子へはその通り答えてやったが、彼女のこの頃の恐怖は若しやあの大江春泥にかかわりがあるのではないかと思うと、私はあとで説明する様な理由の為に、何となくいやあな心持がした。
無論私は大江春泥の作品はよく知っていたが、春泥という男が非常な人嫌いで、作家の会合などにも一度も顔を出さなかったので、個人的なつき合いはなかった。
それに、彼は昨年のなか頃からぱったり筆をとらなくなって、どこへ引越してしまったか、住所さえ分らないと云う噂を聞いていた。
私は静子へはその通り答えてやったが、彼女のこの頃の恐怖は若しやあの大江春泥にかかわりがあるのではないかと思うと、私はあとで説明する様な理由の為に、何となくいやあな心持がした。