私は静子へはその通り答えてやったが、彼女のこの頃の恐怖は若しやあの大江春泥にかかわりがあるのではないかと思うと、私はあとで説明する様な理由の為に、何となくいやあな心持がした。
すると間もなく、静子から「一度御相談したいことがあるから、御伺いしても差支ないか」という端書が来た。
私はその「御相談」の内容をおぼろげには感じていたけれど、まさかあんな恐ろしい事柄だとは想像もしなかったので、愚かにも浮き浮きと嬉しがって、彼女との二度目の対面の楽しさを、様々に妄想していた程であったが、「お待ちしています」という私の返事を受け取ると、直ぐその日の内に私を訪ねて来た静子は、もう私が下宿の玄関へ出迎えた時に、私を失望させた程も、うちしおれていて、彼女の「相談」というのが又、私の先の妄想などはどこかへ行ってしまった程、異常な事柄だったのである。