「わたくし、主人側の親類の外には、身内と云っては一人もございませんし、御友達にこんなことを相談する様な親身の方はありませんし、本当に無躾だとは思いましたけれど、わたくし、先生に御すがりすれば、私がどうすればいいか、御教え下さるでしょうと思いましたものですから」
彼女にそんな風に云われると、この美しい女がこんなにも私をたよっているかと思うと、私は胸がワクワクする程嬉しかった。
私が大江春泥と同じ探偵作家であったこと、少くとも小説の上では、私が仲々巧みな推理家であったことなどが、彼女が私を相談相手に選んだ幾分の理由を為していたには相違ないが、それにしても、彼女が私に対して余程の信頼と好意を持っていないでは、こんな相談がかけられるものではないのだ。