そして、昼間も雨戸をしめ切って、態と五燭の電燈をつけて、薄暗い部屋の中で、彼一流の無気味な妄想を描きながら、蠢いているのだということであった。
私は彼が小説を書かなくなって、行衛不明を伝えられた時、ひょっとしたら、彼はよく小説の中で云っていた様に、浅草あたりのゴミゴミした裏町に巣を喰って、彼の妄想を実行し始めたのではあるまいかと、ひそかに想像を廻らしていたのだが、果せるかな、それから半年もたたぬ内に、彼は正しく一箇の妄想実行者として、私の前に現われたのであった。
私は春泥の行衛を探すのには、新聞社の文芸部か雑誌社の外交記者に聞合せるのが最も早道であると考えた。