私は春泥の行衛を探すのには、新聞社の文芸部か雑誌社の外交記者に聞合せるのが最も早道であると考えた。
それにしても、春泥の日常が甚しく風変りで、滅多に訪問者にも会わなかったという程だし、雑誌社などでも、一応は彼の行衛を探したあとなのだから、余程彼と昵懇であった記者を捉えなければならぬのだが、幸いにも丁度おあつらえ向きの人物が、私の心易い雑誌記者の中にあった。
それは其道では敏腕の聞え高い博文館の本田という外交記者で、彼は殆ど春泥係りの様にして、春泥に原稿を書かせる仕事をやっていた時代があったし、彼はその上、外交記者丈けあって、探偵的な手腕も仲々あなどり難いものがあるのだ。