と安請合をしたが、私はそれ丈けでは安心がならず、私自身も本田から聞いた春泥の最後に住んでいたという、上野桜木町三十二番地へ行って、近所で様子を探って見ることにした。
翌日私は、書きかけの原稿をそのままにして置いて、桜木町へ出掛け、近所の女中だとか出入商人などをつかまえて、色々と春泥一家のことを聞き廻って見たが、本田の云ったことが決して嘘でなかったことを確めた以上には、春泥の其後の行衛については何事も分らなかった。
あの辺は、小さな門などのある中流住宅が多いので、隣同志でも、裏長屋の様に話合うことはなく、行先を告げずに引越して行ったという位のことしか、誰も知らなかった。