静子の艶々した丸髷には、(真上から見た丸髷というものの形からして、已に変であったが)前髪と髷との間の窪みに、薄くではあったが、ほこりが溜って、外の綺麗な部分とは比較にならぬ程汚れていたし、髷に続く項の奥には、着物の襟と背中との作る谷底を真上から覗くので、脊筋の窪みまで見えて、そして、そのねっとり青白い皮膚の上には例の毒々しい蚯蚓脹れが、ずっと奥の暗くなって見えぬ所までも、いたいたしく続いているのだ。
上から見た静子は、やや上品さを失った様ではあったが、その代りに、彼女の持つ一種不可思議なオブシニティが一層色濃く私に迫って来るのを感じた。
それは兎も角、私は何か大江春泥を証拠立てる様なものが残されていないかと、手提電燈の光を近づけて、梁や天井板の上を調べ廻ったが、手型も足跡も、皆曖昧で、無論指紋などは識別されなかった。