私は静子からの知らせで、その日の夕刻小山田家に駈けつけ、初めて凡ての事情を聞知ったのであるが、六郎氏はその前日別段変った様子もなく、いつもよりは少し早く会社から帰宅して、晩酌を済ませると、川向うの小梅の友人の所へ、碁を囲みに行くのだと云って、暖い晩だったので大島の袷に鹽瀬の羽織丈けで、外套は着ず、ブラリと出掛けた。
それが午後七時頃のことだ。
遠い所でもないので、彼はいつもの様に、散歩旁々、吾妻橋を迂回して、向島の土手を歩いて行った。
私は静子からの知らせで、その日の夕刻小山田家に駈けつけ、初めて凡ての事情を聞知ったのであるが、六郎氏はその前日別段変った様子もなく、いつもよりは少し早く会社から帰宅して、晩酌を済ませると、川向うの小梅の友人の所へ、碁を囲みに行くのだと云って、暖い晩だったので大島の袷に鹽瀬の羽織丈けで、外套は着ず、ブラリと出掛けた。
それが午後七時頃のことだ。
遠い所でもないので、彼はいつもの様に、散歩旁々、吾妻橋を迂回して、向島の土手を歩いて行った。