知らせによって駈けつけた、花川戸交番の巡査の指図で、発着所の若い者が、モジャモジャした死骸の頭の毛を掴んで引上げようとすると、その頭髪が頭の地肌から、ズルズルとはがれて来たのだ。
若い者は、余りの気味悪さに、ワッと云って手を離してしまったが、入水してからそんなに時間がたっている様でもないのに、髪の毛がズルズルむけて来るのは変だと思って、よく調べて見ると、何のことだ、髪の毛だと思ったのは、鬘で、本人の頭はテカテカに禿上っていたのであった。
これが静子の夫であり、碌々商会の重役である小山田六郎氏の、悲惨な死様であったのだ。