警察医の検診によると、その致命傷を受けた時間は、前夜の一時頃らしいということであったが、何分死体には着物も持物もないので、何所の誰とも分らず、警察でも途方に暮れていた所へ、幸にも昼頃になって、小山田氏を見知るものが現われたので、早速、小山田邸と碌々商会とへ、電話をかけたということであった。
夕刻私が小山田家を訪ねた時には、六郎氏側の親戚の人達や、碌々商会の社員、故人の友人などがつめかけていて、家の中は非常に混雑していた。
丁度今し方警察から帰った所だと云って、静子はそれらの見舞客にとり囲まれて、ぼんやりしているのだ。