「ええ、でも、外にそんな真似をする人なんて、ある筈がないのですもの」
私達はその時、こんな風の会話を取交したあとで、六郎氏の殺人犯人が大江春泥の平田一郎に相違ないこと、彼がこの次には静子をも殺害しようと企らんでいることを、静子と私とが同道で警察に申出で、保護を願うことに話を極めた。
この事件の係りの検事は、糸崎という法学士で、幸にも私達探偵作家や医学者や法律家などで作っている猟奇会の会員だったので、私が静子と一緒に、所謂捜査本部である象潟警察へ出頭すると、検事と被害者の家族という様な、しかつめらしい関係ではなく、友達つき合いで、親切に私達の話を聞取ってくれた。