静子は初対面の時から、私の小説の愛読者として、私に少なからぬ好意を持っていたことは、先に記した通りであるが、その上に二人の間に、こういう複雑な関係が生じて来たのだから、彼女が私を二なきものに頼って来たのは、誠に当然のことであった。
そうしてしょっちゅう逢っていると、殊に彼女が未亡人という境遇になって見ると、今迄は何かしら遠い所にあるものの様に思われていた、彼女のあの青白い情熱や、なよなよと消えてしまい相な、それでいて不思議な弾力を持つ肉体の魅力が、俄かに現実的な色彩を帯びて、私に迫って来るのであった。
殊にも、私が偶然彼女の寝室から、外国製らしい小型の鞭を見つけ出してからと云うものは、私の悩ましい慾望は、油を注がれた様に、恐ろしい勢で燃え上ったのである。