私はそれをここに叙述する煩を避けて、その時糸崎検事に送る為に書いた私の意見書が残っているから、それにいくらか書入れをして、左に写して置くことにするが、この推理は、私達探偵小説家の空想力を以てでなければ、恐らく組立て得ない体のものであった。
そして、そこに一つの深い意味が存在していたことが、のちになって分って来たのだが。
(前略)そういう訳で、私は、小山田邸の静子の居間の天井裏で拾った金具が、小山田六郎氏の手袋のホックから脱落したものと考える外はないことを知りますと、今迄私の心の隅の蟠りとなっていた色々の事実が、この私の発見を裏書きでもする様に、続々思い出されて来るのでありました。