金満紳士小山田氏が、かくの如き綿密陰険なる稚気の所有者であったことは、彼が表に温厚篤実を装いながら、その寝室に於ては、世にも恐るべき悪魔と形相を変じ、可憐なる静子夫人を外国製乗馬鞭を以て、打擲し続けていたことと共に、我々の誠に意外とする所でありますけれど、温厚なる君子と、陰険なる悪魔とが、一人物の心中に同居したためしは、世にその例が乏しくないのであります。
人は、彼が温厚でありお人好しであればある程、却って悪魔に弟子入りし易いとも云えるのでありますまいか。
さて、私は斯様に考えるのであります。
金満紳士小山田氏が、かくの如き綿密陰険なる稚気の所有者であったことは、彼が表に温厚篤実を装いながら、その寝室に於ては、世にも恐るべき悪魔と形相を変じ、可憐なる静子夫人を外国製乗馬鞭を以て、打擲し続けていたことと共に、我々の誠に意外とする所でありますけれど、温厚なる君子と、陰険なる悪魔とが、一人物の心中に同居したためしは、世にその例が乏しくないのであります。
人は、彼が温厚でありお人好しであればある程、却って悪魔に弟子入りし易いとも云えるのでありますまいか。
さて、私は斯様に考えるのであります。