小山田家は門から玄関まで、相当の距離がありますので、外出から帰った折など、召使達に知れぬ様、玄関脇の物置に忍込み、そこから天井伝いに、静子の居間の上に達するのは、誠に雑作もないことです。
私は、六郎氏が夕刻から、よく小梅の友達の所へ碁を囲みに出かけたのは、この屋根裏の遊戯の時間をごまかす手段ではなかったか、とさえ邪推するのであります。
一方、その様に「屋根裏の遊戯」を愛読していた六郎氏が、その奥附の作者の本名を発見し、それが嘗つて静子にそむかれた彼女の恋人であり、彼女に深い恨みを抱いているに相違ない平田一郎と同一人物ではないかと疑い始めたのは、さもあり相なことではありませんか。