彼は「屋根裏の遊戯」の口絵で、春泥の写真を見て居ります。
その写真は春泥の若い時分のものだと云われている程ですから、無論六郎氏の様に禿頭ではなく、ふさふさとした黒髪があります。
ですから、若し六郎氏が手紙や屋根裏の蔭に隠れて静子を怖がらせることから、一歩を進め、彼自身大江春泥に化け、静子がそこにいるのを見すまして、洋館の窓の外からチラリと顔を見せて、ある不思議な快感を味おうと企らんだならば、彼は何よりも先ず、彼の第一の目印である禿頭を隠す必要に迫られたに相違ありませんが、丁度それには持って来いの鬘があったのです。