死体頭部ニハ鋭器ヲ以テシタルカ如キ切創アリ。
検案ノ医師カ右ハ生前ノ切傷ニシテ死因ヲ為シ、尚腹部ニ多少ノ水ヲ蔵セルハ、殺害ト同時ニ水中ニ投棄セラレタルモノナル旨ヲ断定セルニ依リ、茲ニ大事件トシテ俄ニ捜査官ノ活動ハ始マレリ。
被害者ノ身元ヲ知ランカ為メニアラユル方法ハ尽クサレ遂ニ端緒ヲ得サリシ処、数日ヲ経テ、京都市上京区浄福寺通金箔業斎藤方ヨリ同人方雇人小林茂三(二三)ノ家出保護願ノ郵書ヲ受理シタル大津警察署ニ於テハ、偶々其人相着衣ト本件被害者ノ夫ト符合スル点アルヲ以テ、直ニ斎藤某ニ通知シ死体ヲ一見セシメタルニ全ク其雇人ナルコト判明シタルノミナラス、他殺ニ非スシテ実ハ自殺ナル事ヲモ確定セラレヌ。