土蔵の二階には絨氈を敷きつめ、ベッドや長椅子を置き、幾つも大型の鏡を並べなどして、私達は遊戯の舞台を出来る丈け効果的に飾り立てたのだが、静子は私が止めるのも聞かず、絨氈にしろ、ベッドにしろ、出来合ではあったけれど、馬鹿馬鹿しく高価な品を、惜し気もなく買入れた。
静子は、派手な結城紬の一重物に、桐の落葉の刺繍を置いた黒繻子の帯をしめて、例によって艶々とした丸髷のつむりをふせ、ベッドの純白のシーツの上に、フーワリと腰をおろしていたが、洋風の調度と、江戸好みな彼女の姿とが、ましてその場所が薄暗い土蔵の二階なので、甚しく異様な対照を見せていた。
私は、夫をなくしても変えようともしない、彼女の好きな丸髷の匂やかに艶々しく輝いているのを見ると、直ぐ様、その髷がガックリとして、前髪がひしゃげた様に乱れて、ネットリしたおくれ毛が、首筋の辺にまきついている、あのみだらがましき姿を目に浮べないではいられなかった。