もし春泥がまだあなたをつけねらっているとしたら」私は恋の遊戯どころではなかった。
「僕はまた、この事件の内から、ある不思議な一致を二つ丈け発見した。
学者臭い云い方をすれば、一つは空間的な一致で、一つは時間的な一致なんだけれど、ここに東京の地図がある」私はポケットから用意して来た簡単な東京地図を取出して、指で指し示しながら「僕は大江春泥の転々として移り歩いた住所を、本田と象潟署の署長から聞いて覚えているが、それは、池袋、牛込喜久井町、根岸、谷中初音町、日暮里金杉、神田末広町、上野桜木町、本所柳島町、向島須崎町と、大体こんな風だった。