瀕死の格太郎が、命の限りを尽して、やっと書くことの出来た、おせいに対する呪いの言葉、最後の「イ」に至って、その一線を劃すると同時に悶死をとげた彼の妄執、彼はそれに続けて、おせいこそ下手人である旨を、如何程か書き度かったであろうに、不幸そのものの如き格太郎は、それさえ得せずして、千秋の遺恨を抱いて、ほし固って了ったのである。
併し、格二郎にしては、彼自身善人である丈に、そこまで疑念を抱くことは出来なかった。
単なる「オセイ」の三字が何を意味するか、それが下手人を指し示すものであろうとは、想像の外であった。