さも申訳めいて、重々しく云うのを、北川はよくも聞かないで、もうその事は忘れて了ったかの如く、別のタイピストの背中へ、指先でいたずらをしながら、自席の方へ歩いて行った。
野田幸吉は、もう一度艶子の出て行ったドアの方へ、臆病な一瞥を投げると、暫らく前の算盤の玉をいじくっていたが、何となく落つかぬ様子で、やがて、ふと立上ると、なるべく人の顔を見ない様に、目のやり場に困るといった恰好で、ソロソロと室を出た。
廊下には人の影もない。
さも申訳めいて、重々しく云うのを、北川はよくも聞かないで、もうその事は忘れて了ったかの如く、別のタイピストの背中へ、指先でいたずらをしながら、自席の方へ歩いて行った。
野田幸吉は、もう一度艶子の出て行ったドアの方へ、臆病な一瞥を投げると、暫らく前の算盤の玉をいじくっていたが、何となく落つかぬ様子で、やがて、ふと立上ると、なるべく人の顔を見ない様に、目のやり場に困るといった恰好で、ソロソロと室を出た。
廊下には人の影もない。