西村陽吉はチョッキの両脇へ左右の拇指をはさんで、残りの指をヒラヒラさせながら、椅子からヒョイと立上ると、文案でも考える恰好で、室内を散歩し始めた。
傭人の小娘なんか、眼中にないといった体で、最早やみじめにたるみはじめた口辺の皮膚を、精一杯緊張させ、さも生真面目なへの字を作り、艶子の方は見向きもしないで、コツリコツリと歩いている。
艶子は、引続き取りすました態度で、社長の大机の脇の小さな角テーブルの前に腰を卸し、持って来たメモを拡げると、鉛筆を斜に構えてさしうつむいている。
西村陽吉はチョッキの両脇へ左右の拇指をはさんで、残りの指をヒラヒラさせながら、椅子からヒョイと立上ると、文案でも考える恰好で、室内を散歩し始めた。
傭人の小娘なんか、眼中にないといった体で、最早やみじめにたるみはじめた口辺の皮膚を、精一杯緊張させ、さも生真面目なへの字を作り、艶子の方は見向きもしないで、コツリコツリと歩いている。
艶子は、引続き取りすました態度で、社長の大机の脇の小さな角テーブルの前に腰を卸し、持って来たメモを拡げると、鉛筆を斜に構えてさしうつむいている。