西村は大して急ぎの用件でもなさそうに文意を口述しながら、出鱈目の曲線を描いて、その辺を歩き廻っていたが、恰度艶子のかけている椅子のうしろまで来ると、ごく自然に立止り、椅子の凭れに両手をかけて、次の文句を考える為か、目を天井にやって、しばらくじっとしていた。
その様子は、手紙の文句をねるのではなくして艶子の息遣いを伺っている様にも見えた。
「エーと、右の事情につき、御示しの条件にては、残念ながら貴意に添い難きかと……」
西村は大して急ぎの用件でもなさそうに文意を口述しながら、出鱈目の曲線を描いて、その辺を歩き廻っていたが、恰度艶子のかけている椅子のうしろまで来ると、ごく自然に立止り、椅子の凭れに両手をかけて、次の文句を考える為か、目を天井にやって、しばらくじっとしていた。
その様子は、手紙の文句をねるのではなくして艶子の息遣いを伺っている様にも見えた。
「エーと、右の事情につき、御示しの条件にては、残念ながら貴意に添い難きかと……」