二階へ上って、あの広っぱの見える縁側から、薄暗い丘の辺をすかして見たり、その時、郵便脚夫の女房はもうそこには居なかった。
何の必要もないのに、階段を駈けおりて、二三段も踏みはずし、馬鹿馬鹿しく騒がしい物音を立てて見たり、そそくさと下駄を引かけて、表口の格子を開けて見たり、又しめて見たり、そんなことを繰り返したあとで、結局もう一度丘の下まで行って見ないではいられなくなったのである。
私は、もう一間先は見えない程の、夕闇の中を、誰か見ていはしないかと、身のすくむ気持で、うしろの方を振向き振向き、例の丘の所までたどりついた。