ところが、それほどの疑惑にも拘らず、私は何一つ、疑い以上の、ハッキリしたものを掴むことは出来ないのでございました。
門野が家をあけると申しましても、極く僅の間で、それが大抵は行先が知れているのですし、日記帳だとか手紙類、写真までも、こっそり調べて見ましても、あの人の心持を確め得る様な跡は、少しも見つかりはしないのでございます。
ひょっとしたら、娘心のあさはかにも、根もないことを疑って、無駄な苦労を求めているのではないかしら、幾度か、そんな風に反省して見ましても、一度根を張った疑惑は、どう解こうすべもなく、ともすれば、私の存在をさえ忘れ果てた形で、ぼんやりと一つ所を見つめて、物思いに耽っているあの人の姿を見るにつけ、やっぱり何かあるに相違ない、きっときっと、それに極っている。