私は、どこにも怪しいものがいないことを確めて、いくらか安心していたのでもありましょう、その際ながら、女らしい好奇心から、ふとそれらの箱を開けて見る気になりました。
一つ一つ外に取り出して、これがお雛様、これが左近の桜、右近の橘と、見て行くに従って、そこに、樟脳の匂いと一緒に、何とも古めかしく、物懐しい気持が漂って、昔物のきめの濃やかな人形の肌が、いつとなく、私を夢の国へ誘って行くのでございました。
私はそうして、暫くの間は、雛人形で夢中になっていましたが、やがてふと気がつきますと、長持の一方の側に、外のとは違って、三尺以上もある様な長方形の白木の箱が、さも貴重品といった感じで、置かれてあるのでございます。