若しそこに僅かの光でもあろうものなら、気がさして、迚も踊ることはできなかったでしょうが、司会者の心遣いで、幸い暗闇になっていたものですから、男も女も、案外活溌に、おしまいには、コツコツという沢山の跫音が、それから、あらい息使いが、広間の天井に響き渡る程も、勢よく踊り出したものであります。
私と相手の女も、初めの間は、遠方から手先を握り合って、遠慮勝ちに歩いていたのが、だんだん接近して、彼女の顎が私の肩に、私の腕が彼女の腰に、密接して、夢中になって踊り始めたのであります。
私は生れてから、あのような妙な気持を味ったことがありません。