それが、去年の末、披露目やから差向けられて、この木馬館へやって来たのが縁となり、今では常傭いの形で、ガラガラ、ゴットン、ガラガラ、ゴットン、廻る木馬の真中の、一段高い台の上で、台には紅白の幔幕を張り廻らし、彼等の頭の上からは、四方に万国旗が延びている、そのけばけばしい装飾台の上で、金モールの制服に、赤ラシャの楽隊帽、朝から晩まで、五分毎に、監督さんの合図の笛がピリピリと鳴り響く毎に、「ここはお国を何百里、離れて遠き満洲の……」と、彼の自慢のラッパをば、声はり上げて吹き鳴らすのだ。
世の中には、妙な商売もあったものだな。
一年三百六十五日、手垢で光った十三匹の木馬と、クッションの利かなくなった五台の自動車と、三台の三輪車と、背広服の監督さんと、二人の女切符切りと、それが、廻り舞台の様な板の台の上でうまずたゆまず廻っている。